「近くて便利」は永遠に強い
サウナや健康ランド、日帰り温泉など、館内着を提供するような客単価が高めの温浴施設で、クイックコース(名称はいろいろですが)を設定しているケースがあります。
利用時間や利用内容に制限をつける代わりに、通常料金よりも安い金額で利用できますよ、というものです。
短時間でいいから、とか、少しでも安く利用したい、というお客様にとってはありがたい料金体系ですので、それなりの割合で利用があります。
しかし、このクイックコースにも問題点があるのです。
本来、館内着を出して付加価値の高いサービスを提供し、ゆったり過ごしてもらうことで高い客単価をいただくような業態が、時間制限や利用制限を設けることは自らの強みを否定することにつながりかねません。
たとえクイックコース料金を1,000円以下に設定しても、500円で充実した設備が利用できるスーパー銭湯と比べてみるとどうでしょうか。
特に初めて利用するお客様は、施設の内容がまだ分からないので、「とりあえず一番安いコースにしておこうか。」という理由でクイックコースを選択しがちです。そして限定的な利用をした結果、「せっかく来たのに値段のわりにたいしたことないなぁ。これならいつものスーパー銭湯の方がいいか。」と思ってしまい、二度と来店しない…ということにもなりかねないのです。
そう考えると、新規客がたくさん来る施設がクイックコースを設定するのは、もしかすると大きなチャンスロスになっている可能性があります。
また、館内着に着替えてゆったり過ごそうとする人たちと、館内着は使わずに慌ただしく風呂に入って帰る人たちが同じ空間に混在するのもあまり好ましいことではありません。
そこで先日、ある日帰り温泉で「クイックコースは廃止しましょう。」という提案をしました。
すると、「いや、実際クイックコースを利用されるのは、リピーターのお客様がかなり多いのですよ。」という返事が返ってきました。
聞けば、勤め帰りの人や近所の人が、お風呂だけを目的に結構来ているそうです。
ちょっと意外な気がしました。その店のクイックコースは60分で1050円なのですが、どう考えても割高で、私には到底顧客満足度が高いとは思えなかったのです。
しばらく考えて、「あぁ、これも“近くて便利は永遠に強い”ということなんだ。」と理解しました。
近所の人や、通勤経路になっている人にとっては、余計な移動時間をかけずに手軽に利用できるということが最も重要な価値で、それがあれば多少割高でもリピートするということなのです。
コンビニエンスストアの商品が割高でも売れるのと同じことです。
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とはいえ、新規客に対してはクイックコースの存在がマイナスに作用している懸念は残りますので、このままで良いとも思えません。そこでさらに一計を案じるのですが、それは書くと長くなるのでまたの機会にします。![]()
“近くて便利は永遠に強い”という言葉は、前職時代の師匠の一人である、宮野雅俊さんが言っていたことです。どんなに大型で魅力的な商業施設ができても、“近くて便利”というシンプルなニーズが消えることはない、という意味です。
温浴業界では銭湯が次々と廃業していく中、近くで便利であることを活かした業態はまだ確立されていませんが、価値の曖昧な中商圏型の温浴施設が苦戦する中、今後は「わざわざ行きたい大商圏型」と、「近くて便利な小商圏型」に二極分化していくだろうと予想しています。
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株式会社アクトパス 代表取締役 望月 義尚
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