塩素とたたかう(1)
『単純塩素泉』あるいは『センター系』という言葉をご存じでしょうか?
単純塩素泉というのは、単純泉(単純温泉)という温泉法上の分類用語をもじって使われているもので、「塩素以外に特徴が感じられないお湯」のことです。
センター系というのは、温泉に塩素を投入して濾過循環している温浴施設全般を指す言葉で、歴史的にいわゆるヘルスセンター、健康センターと呼ばれた大型温浴施設の登場(1950年代)から濾過循環設備を持って毎日換水を行わないタイプの温浴施設が普及したことに由来します。
いずれも塩素投入と濾過循環によって天然温泉が持つ本来の良さが失われていることを暗に批判しており、そういった『湯づかいがダメ』なタイプの温浴施設に対する蔑称とも言えるでしょう。
いずれも秘湯や源泉かけ流しが好きな温泉愛好家の方々が使う言葉なのですが、私がはじめてこれらの言葉を耳にした時は、正直に言うとムッとしました。
塩素投入や濾過循環自体は、悪意を持ってやっているわけでも行き過ぎた儲け主義でもありません。公衆浴場である以上は浴槽水を一定の塩素濃度に保つことが法によって定められており、もしそれを怠ればレジオネラ菌による重大事故を引き起こす恐れがあるのですから、法律上と安全衛生上の義務なのです。
実際、温浴施設の現場ではお客様から「塩素が臭くて不快だ」「塩素のせいで体調が悪くなった」とクレームを言われることが少なくありませんから、もしも入れずに済むものなら誰も塩素なんて入れたいとは思っていません。残念に思いつつも、遵法と安全衛生管理のために仕方なくやっていることなのです。
個人的に秘湯を求めて旅することが好きであったり体質的に塩素過敏症であったり、それぞれの事情で温泉施設を取捨選択するのは当然のことだと思います。
しかし、社会的に発言力を持った人たちから公然と『単純塩素泉』『センター系』と蔑まれては、真面目に風呂屋をやっている側としては立つ瀬がありません。
例えば、ファミレスなどの外食産業で提供するメニューの多くが加工食品であり、現場の厨房で素材をイチから調理することはできません。その代りに、多彩なメニューを安定的な品質で、お手頃価格で提供しているのです。
それをつかまえて『工場で作った加工食品なんてニセモノ。職人の魂がこもっていないし、いろいろな添加物も入っている。そんなもの食べるべきじゃない。』と批判する人はあまりいないと思います。
食べ物にこだわるのなら、それなりの料金を払って一流店に行くなり、自分で良い素材を入手して調理するなりといった手段があるわけで、ファミレスに本物のこだわりを求めるのはお門違いと言うものです。
以前の私なら、「コアな温泉マニアはマーケット全体から見ればごくわずかであり、マーケット全体の意見ではありませんから、あまり気にしないようにしましょう。」といって片付けていた話かも知れません。
しかし、時代は移り変わるのです。
(つづく)
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